解✦談

解りやすく、解きほぐします。

中日ドラゴンズ--弱さの研究②

他球団を代表する野手を相次いで獲得

 

2004年~11年の落合監督時代は、中日にとって歴史上、唯一の黄金期といえます。

黄金期の強さについては、04年~07年の前半4年間と、08年~11年の後半4年間に
分けて考えた方がいいでしょう。

各年のチーム打率と、チーム防御率を振り返ってみます。

04年=.274/3.86(優勝) 05年=.269/4.13(2位)
06年=.270/3.10(優勝) 07年=.261/3.59(2位→日本一)

08年=.253/3.53(3位) 09年=.258/3.17(2位)
10年=.259/3.29(優勝) 11年=.228/2.46(優勝)

大ざっぱに言うと、前半4年間は打撃力のチーム、後半4年間は
投手力のチームという感じです。

ちなみに11年は「飛ばないボール」が採用された年なので、例外として
扱う必要があります。


前半4年間(それ以前を含む)に加入した選手で貢献度が高かったのは、
投手では05年の中田、06年の吉見、07年の浅尾など。
野手では02年の谷繁、05年のウッズ、07年の中村紀などが挙げられます。

後半4年間に加入した選手で貢献度が高かったのは、08年の和田など。
また、04年に加入したチェンが、08年から先発ローテーション入りしています。

このほか、落合監督時代にドラフトで獲得し、活躍した選手には
藤井、平田、堂上倫、福田、大島、大野などがいますが、これらの選手は
どちらかといえば、落合退任後にレギュラーに定着したと言うべきでしょう。

むしろ新戦力について目立つのは、FAなどを活用して他球団を代表する野手たちを
相次いで獲得したことです。

その観点でみると、後半4年間は福留と川上がメジャー行きで抜けたにもかかわらず、
FAで獲った和田以外に効果的な即戦力の補強がありませんでした。

そのせいか、10年と11年の優勝は、結果としてチームに多大な無理を
強いることになります。

10年には高橋聡が63試合に登板して防御率1.61、浅尾が72試合に登板して
防御率1.68でした。

11年には、またも浅尾が79試合に登板して防御率0.41を記録します。
2人とも、これでパンクしてしまいました。

 

チームとしての組織戦略が機能


落合監督は就任時に「現状の戦力を10%底上げすれば優勝できる」と公言しました。

ファームにいる選手も含めて、使えそうな選手を躊躇なく使うという姿勢は8年間、
変わらなかったと思います。

そんななか、落合監督の就任前に入団していた選手たちが次第に花開いていきます。

投手では朝倉、小笠原、高橋聡、岡本など。
野手では荒木、井端、森野、英智、渡邊などです。

さらに、06年の佐藤充(9勝)や09年の川井(11勝)など、突如として
大活躍する投手が目立ったのも落合監督時代の特徴といえます。

こうしてみると落合監督時代には、新戦力は「即戦力」として大物を獲得し、
同時に既存戦力の底上げを図るという、チームとしての組織戦略がきちんと
機能していたことが分かります。

投手の細かい継投策や、守備のスペシャリストの重用など、それなりに
戦術を駆使した面もありましたが、落合監督は戦術の人というよりは、
やはり戦略の人だったのだと思います。

だからこそ、中日の歴史上、唯一の黄金期を築けたのであり、だからこそ、
私のような「80年代のハチャメチャな野武士野球」を夢見る中日ファンにとっては
退屈な試合が多かったわけです。

さて、近年の中日は、たとえば87年の落合や02年の谷繁、05年のウッズ、
08年の和田に匹敵するような、チームに影響を及ぼす大物即戦力の補強を
おこなっているでしょうか。

打撃が弱いと分かっているのなら、投手3人ぐらいの出血は覚悟で、
他チームの中軸打者をトレードで獲りにいくといった気概を見せるべきです。

どうせFAで金を使う気はないのでしょうから。


かつてのように、新加入の選手がすぐに結果を出せないのは、なぜでしょう。

素材を見る目がないのか、育て方が下手なのか、使い方が下手なのか、
そもそも若手を我慢して使う勇気が首脳陣にないのか--。

理由がどれだか分からない気もするし、すべてが理由のような気もします。

 

現在の中日に、落合監督時代のような組織戦略を期待できないことは明らかです。

ならば、奇をてらってもいいから、何かファンをうならせてくれるような新戦術を
見せてはもらえないものでしょうか。

近ごろは2番に強打者を置くなど、従来とは異なる打線の考え方が普及して、
それを実践しているチームも複数、見受けられます。

かつては70年代に投手の分業制(先発・中継ぎ・抑え)をいち早く導入するなど、
中日はそういう新しい取り組みに熱心なチームだと思っていたのですが、最近は
どうにもやることが保守的で退屈です。

即戦力の獲得についても、新戦力の活躍ぶりについても、首脳陣の戦術についても、
何もかもが落合監督時代よりもさらに退屈だというところに、現在の中日の弱さが
すべて凝縮されているのだと思います。