解✦談

解りやすく、解きほぐします。

投資と投機

お金を投じる「そもそもの対象」が異なる

 

「投資」と「投機」のちがいについて、こんな説明をよく見かけます。

●投資とは、株式でいえば「企業の利益成長」のように、これから価値が
  上がっていくことを見越してお金を投じる行為を指す。
  いわば「価値の向上」にお金を賭けること。

●投機とは、株式でいえば「株価の変動」のように、これから価格が
  上がっていくことを期待してお金を投じる行為を指す。
  いわば「機(チャンス)」にお金を賭けること。


これは「株式を購入する」という行為は同じでも、「何にお金を投じるか」という
考え方によって、投資にも投機にもなると言っているわけです。


それから、こんな説明もあります。

株式投資では極端な話、ある企業が成長して株価が上がり続ければ、
  その企業に投資したすべての投資家が利益を得られる可能性がある。

外国為替取引では、為替レートの変動によって勝者が得る利益と、敗者が被る
  損失は等しくなる。そのように、参加者の利益と損失の総合計がゼロになる状態を
ゼロサムゲーム」と呼び、投機の典型とされる。


したがって、為替レートの変動という機(チャンス)にお金を賭ける
FX(外国為替証拠金取引)は、投機の一種ということになります。


これらの説明は間違いではありませんが、いきなりこんな話をされたら、
ややこしくて面食らってしまう人も多いのではないでしょうか。

おそらく話の内容が、先を急ぎすぎているのだと思います。その前にまず、
もっと基本的な話をしておく必要があるでしょう。


たとえば株式投資を、宝クジや競馬などのギャンブルと比較してみます。
ギャンブルは、言うまでもなく投機の代表です。


株式投資では、最初に投じたお金がゼロになることは、企業の倒産など
一部の例外を除いてほとんどありません。

企業の利益成長を見越してお金を投じようが、株価の変動というチャンスに
お金を投じようが、それは同じことです。


一方のギャンブルは、「当たりを引くか、外れを引くか」だけの世界であり、
外れを引けば、投じたお金はゼロになってしまいます。

つまり投資と投機では、お金を投じる「そもそもの対象」が異なるのです。

投資は「価値が増減するもの」にお金を投じることであり、
投機は「当たりか外れのどちらか」にお金を投じることです。

この説明なら、FXが投機の一種であるという結論にも合点がいくはずです。

 

分散投資とリスクの関係


「リスク」については、こんな説明をよく見かけます。

●投資のリスクとは、将来的に得られる利益が大小に「ぶれる」こと、
  あるいはその「ぶれ幅」を指す。

●ハイリスク・ハイリターンとは、将来的に予想される利益の値が大きく、
  しかも「実際に得られる利益のぶれ幅」も大きいことを意味する。


これらの話も「何のこっちゃ?」と思う人が多いのではないでしょうか。

ここではあえてリスクの話を、先ほどの「投資と投機の比較」に
あてはめて考えてみます。

株式投資をやる際に、複数の銘柄への「分散投資」が大切だと言われるのは、
以下のような理由からです。

いま仮に、私が株式の「銘柄A」を購入して、今後1年間で10%の値上がりを
期待したとしましょう。

1年後に株価がどうなっているかは誰にも分からないので、現実には、
銘柄Aの株価が1年後に10%の値下がりとなることだってあります。

最初に期待した「プラス10%」が、実際には「マイナス10%」だった場合、
私にとっての1年後の投資結果は20%分、下に「ぶれた」ことになります。

このとき、私が一緒に「銘柄B」も、銘柄Aと同じ金額だけ購入していて、
こちらも今後1年間で10%の値上がりを期待したとします。

銘柄Bが思いのほか調子よく、1年後に20%値上がりしてくれた場合、
私にとっての1年後の投資結果は10%分、上に「ぶれた」ことになります。

銘柄Aと銘柄Bを合わせた1年後の投資結果は「プラス10%」です。

私は当初、銘柄Aにも銘柄Bにも10%ずつの利益を見込んでいたので、
1年後の投資結果は「プラス20%」を期待していたわけです。

それから見れば、実際の投資結果は10%分、下に「ぶれた」ことになりますが、
銘柄Aだけを購入していた場合の「20%分、下にぶれた状態」と比べれば、
下へのぶれ幅が10%分だけ改善されたことになります。

このように株式投資では、期待する利益が大小にぶれる幅(リスク)を
なるべく小さく抑えるために、分散投資が推奨されるのです。

なぜ期待する利益が大小にぶれるのかといえば、株式投資が企業という
「価値が増減するもの」にお金を投じることであり、その価値の増減について、
誰にも正確に予測することはできないからです。


私たち一般個人は、上記のように株式銘柄を購入した時点で、1年後の具体的な
値上がり率など設定しないのがふつうです。

なので、より現実的には、「一定期間中に発生し得る投資の損失をできるだけ
小さく抑えるため」に、分散投資を行うと考えていいと思います。


ちなみにハイリスク・ハイリターンとは、過去の値動きなどのデータからみて、
一定期間後の将来に期待される利益(リターン)が大きく、なおかつ過去の経験上、
その利益が大小にぶれる幅も大きいような状態を指します。

株式では、小型株や新興国の株式などがこれに当たるといわれています。

 

宝クジや競馬でも、分散投資に似たことは行われます。

当たる確率がどれだけ高くなるのかは分かりませんが、宝クジを数百枚、
数千枚も買う人がいるというのは、「数打ちゃ当たる」という考えに
もとづいてのことでしょう。

競馬では、ひとつのレースについて、複数の馬番号の組み合わせを購入するのが
ふつうです。馬番号の組み合わせは「点」で数えますが、これもやはり
1点買いより10点買いという具合に点数を増やすことで、当たる確率が
高まるような気になるからです。

これらのギャンブルでは、外れを引くことで投じたお金がゼロになることが
リスクなのです。

もう少し厳密にいうと、宝クジは10枚つづりで買えば1枚は最低金額が
当たるように設計されているし、競馬も買い方によっては、投じたお金の
一部が返ってくる場合もあります。

しかし、ギャンブルではふつう、投じたお金が増えなければ、それは負けと
みなします。株式投資のように、損失が思ったより小さく抑えられたからといって
ホッとするような人は、ギャンブラーにはまず、いないのです。