解✦談

解りやすく、解きほぐします。

インデックス型とアクティブ型

ベンチマークの功罪

 

アクティブ型の投資信託では、ファンドマネージャーが自分の考えにもとづいて、
投資する銘柄を決めていきます。

つまりアクティブ型の投資信託では、投資が上手くいくかどうかは、
ファンドマネージャーの力量にかかっていることになります。

たとえばいま、日本株に投資するアクティブ型の投資信託が10本あるとします。

過去1年間の騰落率(投資成績)をみると、4本がマイナス10%で、
6本がマイナス20%でした。

すべて投資成績はマイナスなので、私たちはどれを購入していても、
投資資金が減ったことになります。

このとき、私たちは10本の投資信託すべてについて、
「投資が上手くいかなかった」と判断していいのでしょうか?


アクティブ型の投資信託は一般に、「ベンチマーク」と呼ばれる
目標値を設定しています。

これはいわば投資信託が「自らの投資成績の目安」とするもので、
日本株に投資するタイプでは通常、TOPIX東証株価指数)や
日経平均株価が採用されています。

投資信託の業界では、これらの株価指数が日本の株式市場の「平均値」を
表していると考え、それを上回る投資成績を残せるかどうかが、
ファンドマネージャーの腕の見せどころだと言いたいわけです。


先のケースで、10本すべてがTOPIXベンチマークにしていて、
過去1年間のTOPIXの騰落率がマイナス15%だったとしたら、
10本中4本はベンチマークを上回り、6本はベンチマーク
及ばなかったことになります。

この場合、同じマイナスの騰落率でも、ベンチマークを上回った4本の方が、
相対的な評価は高くなります。

損失がベンチマークより5%分だけ少なくて済んだのは、ファンドマネージャー
腕によるものと考えられるからです。

 

一方で、株価指数というベンチマークの存在は、私たち一般の投資家に
困った問題をもたらすことにもなります。

まず、投資信託の成績がマイナスでも、「ベンチマークは上回ったのだから」と、
ファンドマネージャーの言い訳に使われる恐れあります。

成績がプラスであっても、それがベンチマークを少し上回った程度だった場合は、
投資家にもたらされる利益が「株価指数の値上がり率」とほとんど変わらない
可能性
が出てきます。

アクティブ型の投資信託は銘柄選択に手間ひまをかける分だけ、信託報酬が高く
設定される傾向にあり、その分だけ利益が削られてしまうからです()。

本来なら株価指数の値上がり率を上回るために支払うコストが、
現実的にはムダになるような投資信託をどう評価すればいいのか、
私たちにとっては悩ましいところでしょう。

投資信託協会が公表している「投資信託の主要統計等ファクトブック」によると、
2021年6月末現在、私たちがいつでも買える「公募追加型の株式投資信託」における

信託報酬の年率平均は、アクティブ型が1.16%、インデックス型が0.42%となっています。

また、成績がベンチマークを上回ったとしても、そもそもそれが本当に
ファンドマネージャーの力量によるものなのか、それとも単なる
「まぐれ」に
よるものなのか、私たちは正確に判別することができません。

なぜなら、ファンドマネージャーがある時点でなぜA株を買い、
B株を売ったのかという投資判断にあたる部分は「企業秘密」であり、
ブラックボックスだからです。

それはつまり、私たちがファンドマネージャーの力量が高いアクティブ型の
投資信託を選ぶことは、事実上、不可能に近いことを意味します。

 

消去法としてインデックス型が人気に


それならば、いっそのこと株価指数そのものに投資すればよいではないか、
という発想から生まれてきたのが、インデックス型の投資信託です。

インデックス型の投資信託が世界で初めて登場したのは、1975年(米国)の
ことであり、日本でも85年が最初なので、歴史はそれほど古くありません。

私たち一般の投資家が、インデックス型の投資信託を選ぶことのメリットとしては、
以下のようなものが考えられます。

●アクティブ型に比べて投資にかかるコストが低い。

投資信託ごとに「投資の力量」を測る必要がない。

●事実上、株価指数の対象となる全銘柄に投資することになるので、
  いわゆる「分散投資」の効果が高い


私たちが5年や10年、20年といった中長期で投資を考えるにあたっては、
アクティブ型との比較で、インデックス型を選ぶことのメリットが出てきます。

世界の株価指数などを提供しているS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの
データによると、日本株に投資するアクティブ型の投資信託について、
次のような調査結果が出ています。

●2020年末の時点で、過去5年間の騰落率(投資成績)をみると、
  全体の約54%がベンチマークである株価指数に負けている。

●同じく過去10年間の騰落率をみると、全体の約68%が負けている。

つまり、10年程度の長期では、全体の7割近くのアクティブ型が
インデックス型に負けるわけです。

これは日本国内で販売されている投資信託に関するデータですが、同様の傾向は、
米国で販売されている「米国株に投資するアクティブ型の投資信託」にも見られます。


さらに、ある他の調査では最初の10年間でベンチマークに勝ったアクティブ型が、
次の10年間もベンチマークに勝つケースは非常に少ないことが分かっています。

私たちが、「長期にわたってインデックス型に勝ち続けるアクティブ型」を選ぶのは、
困難であると言わざるを得ません。

アクティブ型がインデックス型に勝ちづらい大きな要因としては、
やはりアクティブ型における信託報酬の高さが指摘されています。

信託報酬は毎年かかるコストなので、投資の期間が長期になればなるほど、
投資成績に及ぼす影響は大きくなります。

ここ10年ほどで、こうした事実が一般の投資家の間にも知れわたり、
わざわざ高い投資コストを払ってまでアクティブ型の投資信託を購入し、
持ち続けることは無意味ではないか、という疑念が広まりました。

そうして、なかば消去法のようなかたちで、インデックス型の人気が
高まってきたわけです。