解✦談

解りやすく、解きほぐします。

投資は購入より売却が難しい

売却時に生じる人間の複雑な心理

 

手持ちの投資信託でも、株式でも、何でもいいのですが、私たちがいま保有している
金融商品の一部、あるいは全部について、売却を検討するケースを考えてみます。

手持ちの投資信託や株式が、購入したときより値下がりしていた場合には、
人びとは「もう少し待てば価格が買い値あたりまで戻るのではないか」と思い、
損切り(損失が出ると分かっていて売ること)をためらう傾向が強いようです。

反対に、手持ちの投資信託や株式が、購入したときより値上がりしていた場合には、
人びとの心理状態は大きく2つに分かれる傾向がみられます。

ひとつは、「これからまだ値上がりするかもしれない」と思い、売ることを
ためらうというもの。

もうひとつは、「現状から値下がりして価格が買い値を下回ってしまうこと」を恐れ、
できるだけ早く売却して、利益を確定させたいというもの。

どうやら私たち人間には、投資にあたって「損失を避けたい」という気持ちや、
「これから得られる利益を逃したくない」という気持ちが強く働くようです。

人間の心理状態が、実際の経済行動にどのような影響を及ぼすかを研究する、
行動経済学」という学問分野があります。

行動経済学では、私たちが投資で損失を避けたいと願うのは「損失回避性」が、
さらなる利益を逃したくないと思うのは「保有効果」が、それぞれ働いて
いるからだと考えます。


●損失回避性:人間が同じ金額の利益と損失を比較した場合に、
  利益を得る喜びよりも、損失を被る悲しさの方がより大きくなるため、
  損失を回避しようとする習性。

保有効果:人間がいちど何かを手に入れると、それが手元になかったときよりも
  価値が高いもののように感じて、手放すことに抵抗を感じる現象。


私たち人間の心理は、まことに複雑で、我がままなものなのですね。

いずれにしても金融商品の売却は、あくまでも私たち自身が決めておこないます。

自らの手で「損失を確定させること」や、「さらなる利益の芽を摘み取ること」は、
多くの人にとって、どうしても許しがたい行為なのでしょう。

投資において、売却が購入よりもはるかに難しいといわれるのは、
こうした人間の心理が大きく影響するためです。

そんな心理的な壁を打ち破るひとつの方法として「損切りルール」があります。

自分が持っている投資信託や株式の価格が、たとえば買い値から10%や
20%下がったら、その時点で半額分を売るとか、すべてを売るなどと、
あらかじめ自分のなかでルールを決めておきます。

実際に価格がその水準まで下がったら、機械的にルールを実行することで、
売却に対する心理的な抵抗感を振り払うことができるというわけです。


この損切りルールを逆手にとれば、「益切りルール」をつくることもできるでしょう。

現状の価格が買い値より上がっている場合に、まだ上がるのではないかと売却を
ためらったり、これから下がるのを恐れて売却を急ぎすぎてしまう人のための
ルールです。

損切りの場合と同じように、手持ちの投資信託や株式の価格が買い値から
〇%上がったら、どれだけを自動的に売ると決めておくことで、売却に対する
ためらいや、焦りの気持ちを振り払うわけです。

 

 換金して使うときが、金融商品の売りどき


ところで、そもそも損切りには、どのような意味があるのでしょうか。

まず、それ以上の価格下落による損失の拡大を防ぐこと。

さらに、損切りによって投資信託や株式などを換金し、現金を手にすれば、
その資金を使って新たな投資を始めることも可能です。

いつまでも売却をためらい続ける、いわゆる「塩漬け」の状態では、
手元に資金がないために新たな投資を始められず、手持ちの投資信託や株式の
価格が回復するのをひたすら待つしかありません。

たとえば投資信託を100万円の資金で購入し、基準価額が10%値下がりした時点で
すべてを損切りすると、手元には単純計算で90万円が残ります。

その90万円を使って新たな投資信託を購入した場合、12%の値上がりによって、
最初の100万円を回復することができます。


しかし冷静に考えると、新たに購入した投資信託が実際に値上がりしてくれなければ、
せっかく損切りをしても、その甲斐がなかったことになります。

投資を継続するという前提で、損切りを意味のあるものとするためには、
私たちがタイミングよく、これから値上がりしそうな投資信託を新たに選んで
購入する必要があるわけです。

そんな都合のよいことが、本当に可能でしょうか。

むしろ、そういうタイミングを測った銘柄選びや投資が難しいからこそ、
私たちは投資信託という金融商品を使うのではなかったでしょうか。


損切りによって、いったん投資を完全に中断する場合はともかくとして、
これからも投資を続けていくつもりの人は、損切りの是非について、
よくよく考えた方がいいかもしれません。


とくに、自分のなかで「売却の必要性」がはっきりしていない場合は
注意が必要です。

たとえば株式市場で暴落が起きて、投資家がパニック売りに走っているようなとき、
「自分も売った方がいいかも」と、あたふたしてしまう人は少なくないでしょう。

私たちが金融商品の売却を本当に迷うのは、売る必要に迫られたときではなくて、
「売りたい」という誘惑にかられたときなのだと思います。

損切りルールにもとづく自動的な金融商品の売却には、
私たちに「自分で決断したのではない」という言い訳を与えて、
売りたいという気持ちを正当化させる面が強いような気がします。

 

私たちが金融商品を売る必要に迫られるのは、言うまでもなく、それを換金して
使うニーズが生じたときです。

自分や家族が病気で入院する、住宅を購入する、子どもの学費を払い込む…。

そうした資金ニーズが自分にとって本当に必要なことならば、金融商品の売却によって
投資の損失が確定する悲しみや、売却後に価格が上がったらどうしようという心配は、
まったくもって取るに足らないことです。

このように考えることによって、私たちが投資をやる理由もはっきりしてきます。

私たちは、将来的にどこかで金融商品を換金して使うために投資をやるのであり、
ただ単に財産が増えたといってニヤニヤするために、わざわざ投資などという
面倒なことをやるのではありません

 

換金して使うニーズが生じたとき以外で唯一、金融商品の売却を考えた方がいいのは、
以下のような場合です。

投資信託ファンドマネージャーの交替などにより、投資の方針が明らかに
  従来とは変わってしまい、そのまま継続して保有することに疑問を感じたとき。

●株式銘柄/企業の不祥事や経営悪化などにより、購入時に考えていた企業価値
  明らかに損なわれてしまい、もはや保有するに値しないと感じたとき。

こんなときは、たとえ現状で目立った価格の下落が生じていなくても、
早めに売却を検討すべきだと思います。

 

中日ドラゴンズ--弱さの研究②

他球団を代表する野手を相次いで獲得

 

2004年~11年の落合監督時代は、中日にとって歴史上、唯一の黄金期といえます。

黄金期の強さについては、04年~07年の前半4年間と、08年~11年の後半4年間に
分けて考えた方がいいでしょう。

各年のチーム打率と、チーム防御率を振り返ってみます。

04年=.274/3.86(優勝) 05年=.269/4.13(2位)
06年=.270/3.10(優勝) 07年=.261/3.59(2位→日本一)

08年=.253/3.53(3位) 09年=.258/3.17(2位)
10年=.259/3.29(優勝) 11年=.228/2.46(優勝)

大ざっぱに言うと、前半4年間は打撃力のチーム、後半4年間は
投手力のチームという感じです。

ちなみに11年は「飛ばないボール」が採用された年なので、例外として
扱う必要があります。


前半4年間(それ以前を含む)に加入した選手で貢献度が高かったのは、
投手では05年の中田、06年の吉見、07年の浅尾など。
野手では02年の谷繁、05年のウッズ、07年の中村紀などが挙げられます。

後半4年間に加入した選手で貢献度が高かったのは、08年の和田など。
また、04年に加入したチェンが、08年から先発ローテーション入りしています。

このほか、落合監督時代にドラフトで獲得し、活躍した選手には
藤井、平田、堂上倫、福田、大島、大野などがいますが、これらの選手は
どちらかといえば、落合退任後にレギュラーに定着したと言うべきでしょう。

むしろ新戦力について目立つのは、FAなどを活用して他球団を代表する野手たちを
相次いで獲得したことです。

その観点でみると、後半4年間は福留と川上がメジャー行きで抜けたにもかかわらず、
FAで獲った和田以外に効果的な即戦力の補強がありませんでした。

そのせいか、10年と11年の優勝は、結果としてチームに多大な無理を
強いることになります。

10年には高橋聡が63試合に登板して防御率1.61、浅尾が72試合に登板して
防御率1.68でした。

11年には、またも浅尾が79試合に登板して防御率0.41を記録します。
2人とも、これでパンクしてしまいました。

 

チームとしての組織戦略が機能


落合監督は就任時に「現状の戦力を10%底上げすれば優勝できる」と公言しました。

ファームにいる選手も含めて、使えそうな選手を躊躇なく使うという姿勢は8年間、
変わらなかったと思います。

そんななか、落合監督の就任前に入団していた選手たちが次第に花開いていきます。

投手では朝倉、小笠原、高橋聡、岡本など。
野手では荒木、井端、森野、英智、渡邊などです。

さらに、06年の佐藤充(9勝)や09年の川井(11勝)など、突如として
大活躍する投手が目立ったのも落合監督時代の特徴といえます。

こうしてみると落合監督時代には、新戦力は「即戦力」として大物を獲得し、
同時に既存戦力の底上げを図るという、チームとしての組織戦略がきちんと
機能していたことが分かります。

投手の細かい継投策や、守備のスペシャリストの重用など、それなりに
戦術を駆使した面もありましたが、落合監督は戦術の人というよりは、
やはり戦略の人だったのだと思います。

だからこそ、中日の歴史上、唯一の黄金期を築けたのであり、だからこそ、
私のような「80年代のハチャメチャな野武士野球」を夢見る中日ファンにとっては
退屈な試合が多かったわけです。

さて、近年の中日は、たとえば87年の落合や02年の谷繁、05年のウッズ、
08年の和田に匹敵するような、チームに影響を及ぼす大物即戦力の補強を
おこなっているでしょうか。

打撃が弱いと分かっているのなら、投手3人ぐらいの出血は覚悟で、
他チームの中軸打者をトレードで獲りにいくといった気概を見せるべきです。

どうせFAで金を使う気はないのでしょうから。


かつてのように、新加入の選手がすぐに結果を出せないのは、なぜでしょう。

素材を見る目がないのか、育て方が下手なのか、使い方が下手なのか、
そもそも若手を我慢して使う勇気が首脳陣にないのか--。

理由がどれだか分からない気もするし、すべてが理由のような気もします。

 

現在の中日に、落合監督時代のような組織戦略を期待できないことは明らかです。

ならば、奇をてらってもいいから、何かファンをうならせてくれるような新戦術を
見せてはもらえないものでしょうか。

近ごろは2番に強打者を置くなど、従来とは異なる打線の考え方が普及して、
それを実践しているチームも複数、見受けられます。

かつては70年代に投手の分業制(先発・中継ぎ・抑え)をいち早く導入するなど、
中日はそういう新しい取り組みに熱心なチームだと思っていたのですが、最近は
どうにもやることが保守的で退屈です。

即戦力の獲得についても、新戦力の活躍ぶりについても、首脳陣の戦術についても、
何もかもが落合監督時代よりもさらに退屈だというところに、現在の中日の弱さが
すべて凝縮されているのだと思います。

 

中日ドラゴンズ--弱さの研究①

現在の中日は歴史上、最弱である

 

中日ドラゴンズはなぜ、あきれるほどに弱いのか?

この非常につらい問題を考えるために、まず現在の中日がどれほど弱いのかを
確認しておきましょう。

中日は2002年~12年に、11年連続でセリーグAクラスに入りました。

その後、13年~19年に7年連続でBクラスとなります。

過去の年度別成績を振り返ると、プロ野球セリーグパリーグに分裂した
1950年以降で、中日がセリーグのAクラスに入れなかった過去の最長記録は、
68年~70年の3年間でした。

2020年にようやく8年ぶりのAクラス(3位)となり、そのことで与田監督の
手腕を評価する声もあるようですが、もちろん私はまったく満足していないし、
評価もしていません。

12年を最後に、中日は過去8年間、2位になれていません。
今年(21年)も99%無理なので、9年連続で2位になれないわけです。

2位といっても、12年のように首位から10ゲーム以上も離されることが結構あるので、
それほど意味はないのかもしれませんが、私はあえて2位にこだわります。

中日がセリーグの2位になれなかった過去の最長記録は、76年~81年の6年間です。

現在はその最長記録を更新中なのです。

以上のことから、現在の中日は歴史上、最弱であると言い切れます。

 

なぜ弱いのかという理由については、いろいろな意見があることでしょう。

私も言いたいことはたくさんありますが、ここでは冷静に、大人の対応を
取りたいと思います。

なぜ弱いのかを知るために、過去にはなぜ強かったのかを知るという、
逆の視点を持ち込みます。


先に結論めいたことを言ってしまいます。

中日が過去に優勝した年を振り返ると、その年に、あるいは数年前から、
ほぼ決まって「新しい血の導入」が行われていました。

新しい血とは、ひとつには選手であり、ひとつには監督の戦術です。

 

新戦力が早めに結果を出している

 

まず、私が長い中日ファン人生のなかで、いちばん燃えた年である
1982年を振り返ります。

選手で注目したいのは、80年に牛島が、81年に郭源治と中尾が加入していること。
同81年には、平野が投手から野手に転向しています。

82年には新外国人のモッカが加入し、鈴木孝が本格的に先発へ転向しました。

82年はここに挙げた選手たちが大活躍したわけですが、新しく加入したり、
転向した選手たちが、すぐに結果を出していることが分かります。

監督は前年の81年から近藤貞雄
投手コーチが権藤で、打撃コーチが黒江という、名コーチぞろいです。

近藤監督の選手起用には驚かされました。試合の終盤で中日がリードしていると、
内外野の守備固めとして選手をごそっと入れ替えるのです。

これは当時、「アメフト方式」などと呼ばれましたが、その新戦術のおかげで
81年から平野の出場機会が増え、82年にはレギュラーに定着しました。


次に、1988年の優勝時です。

前年の87年に、世紀の大トレードで落合が加入。
88年には立浪が加入して、新人王を獲得しました。

投手では87年から郭源治がストッパーに転向して大活躍を続け、
88年にトレードで獲得した小野は、いきなり18勝で最多勝に輝きます。

2年目の近藤が8勝、4年目の米村が7勝、5年目の山本昌が5勝など、
フレッシュな左腕の相次ぐ活躍も目立ちました。
高卒ルーキー上原の、地を這うような剛速球も記憶に残っています。

監督は87年から星野仙一

就任から2年間で牛島、大島、平野という、82年優勝時の主要メンバーを放出。
さらには宇野をセカンドへ、中尾を外野へコンバートし、若手や新戦力を躊躇なく
使ったことから分かるように、星野監督の戦術は「徹底した刺激策」ということに
尽きると思います。

そして、このときもやはり、その刺激策に応えて、新加入や若手の選手たちが
早めに結果を残しているのが印象的です。


それから、1999年の優勝時。

加入3年目のゴメスと、移籍2年目の関川が大活躍。
新人の福留も2割8分、16本塁打なら十分に合格点でしょう。

投手では何といっても、この年に岩瀬が加入したことが大きいです。
まだセットアッパーの扱いでしたが、いきなり10勝をあげています。
FAで獲得した武田も9勝したので、まあ及第点。

この年は19勝の野口をはじめ、投手陣が引っ張っての優勝という感が強いですが、
なかでも印象に残っているのは、首脳陣の投手起用の斬新さです。

監督は96年から2度目の就任となる星野仙一
99年には投手コーチとして山田久志を迎えています。

先発投手が5回を投げて、勝利投手の権利を得てリードしていたとします。

そんなとき、たとえば6回はサムソン・リー、7回は落合、8回は岩瀬、
9回は宣銅烈という具合に、投手ひとりに1回を任せる起用戦術が、
シーズンの後半から目立つようになりました。

当時は「ずいぶん贅沢な投手起用をするな」と思ったものですが、
いま考えれば、あれは今日でいうところの「勝利の方程式」
走りだったのですね。

※私が中日ファンになったのは1973年なので、74年の優勝もいちおう
 経験はしていますが、当時は小学4年生だったため、記憶にいまいち
 自信がないことから、74年についての考察は省略します。

 

投資と投機

お金を投じる「そもそもの対象」が異なる

 

「投資」と「投機」のちがいについて、こんな説明をよく見かけます。

●投資とは、株式でいえば「企業の利益成長」のように、これから価値が
  上がっていくことを見越してお金を投じる行為を指す。
  いわば「価値の向上」にお金を賭けること。

●投機とは、株式でいえば「株価の変動」のように、これから価格が
  上がっていくことを期待してお金を投じる行為を指す。
  いわば「機(チャンス)」にお金を賭けること。


これは「株式を購入する」という行為は同じでも、「何にお金を投じるか」という
考え方によって、投資にも投機にもなると言っているわけです。


それから、こんな説明もあります。

株式投資では極端な話、ある企業が成長して株価が上がり続ければ、
  その企業に投資したすべての投資家が利益を得られる可能性がある。

外国為替取引では、為替レートの変動によって勝者が得る利益と、敗者が被る
  損失は等しくなる。そのように、参加者の利益と損失の総合計がゼロになる状態を
ゼロサムゲーム」と呼び、投機の典型とされる。


したがって、為替レートの変動という機(チャンス)にお金を賭ける
FX(外国為替証拠金取引)は、投機の一種ということになります。


これらの説明は間違いではありませんが、いきなりこんな話をされたら、
ややこしくて面食らってしまう人も多いのではないでしょうか。

おそらく話の内容が、先を急ぎすぎているのだと思います。その前にまず、
もっと基本的な話をしておく必要があるでしょう。


たとえば株式投資を、宝クジや競馬などのギャンブルと比較してみます。
ギャンブルは、言うまでもなく投機の代表です。


株式投資では、最初に投じたお金がゼロになることは、企業の倒産など
一部の例外を除いてほとんどありません。

企業の利益成長を見越してお金を投じようが、株価の変動というチャンスに
お金を投じようが、それは同じことです。


一方のギャンブルは、「当たりを引くか、外れを引くか」だけの世界であり、
外れを引けば、投じたお金はゼロになってしまいます。

つまり投資と投機では、お金を投じる「そもそもの対象」が異なるのです。

投資は「価値が増減するもの」にお金を投じることであり、
投機は「当たりか外れのどちらか」にお金を投じることです。

この説明なら、FXが投機の一種であるという結論にも合点がいくはずです。

 

分散投資とリスクの関係


「リスク」については、こんな説明をよく見かけます。

●投資のリスクとは、将来的に得られる利益が大小に「ぶれる」こと、
  あるいはその「ぶれ幅」を指す。

●ハイリスク・ハイリターンとは、将来的に予想される利益の値が大きく、
  しかも「実際に得られる利益のぶれ幅」も大きいことを意味する。


これらの話も「何のこっちゃ?」と思う人が多いのではないでしょうか。

ここではあえてリスクの話を、先ほどの「投資と投機の比較」に
あてはめて考えてみます。

株式投資をやる際に、複数の銘柄への「分散投資」が大切だと言われるのは、
以下のような理由からです。

いま仮に、私が株式の「銘柄A」を購入して、今後1年間で10%の値上がりを
期待したとしましょう。

1年後に株価がどうなっているかは誰にも分からないので、現実には、
銘柄Aの株価が1年後に10%の値下がりとなることだってあります。

最初に期待した「プラス10%」が、実際には「マイナス10%」だった場合、
私にとっての1年後の投資結果は20%分、下に「ぶれた」ことになります。

このとき、私が一緒に「銘柄B」も、銘柄Aと同じ金額だけ購入していて、
こちらも今後1年間で10%の値上がりを期待したとします。

銘柄Bが思いのほか調子よく、1年後に20%値上がりしてくれた場合、
私にとっての1年後の投資結果は10%分、上に「ぶれた」ことになります。

銘柄Aと銘柄Bを合わせた1年後の投資結果は「プラス10%」です。

私は当初、銘柄Aにも銘柄Bにも10%ずつの利益を見込んでいたので、
1年後の投資結果は「プラス20%」を期待していたわけです。

それから見れば、実際の投資結果は10%分、下に「ぶれた」ことになりますが、
銘柄Aだけを購入していた場合の「20%分、下にぶれた状態」と比べれば、
下へのぶれ幅が10%分だけ改善されたことになります。

このように株式投資では、期待する利益が大小にぶれる幅(リスク)を
なるべく小さく抑えるために、分散投資が推奨されるのです。

なぜ期待する利益が大小にぶれるのかといえば、株式投資が企業という
「価値が増減するもの」にお金を投じることであり、その価値の増減について、
誰にも正確に予測することはできないからです。


私たち一般個人は、上記のように株式銘柄を購入した時点で、1年後の具体的な
値上がり率など設定しないのがふつうです。

なので、より現実的には、「一定期間中に発生し得る投資の損失をできるだけ
小さく抑えるため」に、分散投資を行うと考えていいと思います。


ちなみにハイリスク・ハイリターンとは、過去の値動きなどのデータからみて、
一定期間後の将来に期待される利益(リターン)が大きく、なおかつ過去の経験上、
その利益が大小にぶれる幅も大きいような状態を指します。

株式では、小型株や新興国の株式などがこれに当たるといわれています。

 

宝クジや競馬でも、分散投資に似たことは行われます。

当たる確率がどれだけ高くなるのかは分かりませんが、宝クジを数百枚、
数千枚も買う人がいるというのは、「数打ちゃ当たる」という考えに
もとづいてのことでしょう。

競馬では、ひとつのレースについて、複数の馬番号の組み合わせを購入するのが
ふつうです。馬番号の組み合わせは「点」で数えますが、これもやはり
1点買いより10点買いという具合に点数を増やすことで、当たる確率が
高まるような気になるからです。

これらのギャンブルでは、外れを引くことで投じたお金がゼロになることが
リスクなのです。

もう少し厳密にいうと、宝クジは10枚つづりで買えば1枚は最低金額が
当たるように設計されているし、競馬も買い方によっては、投じたお金の
一部が返ってくる場合もあります。

しかし、ギャンブルではふつう、投じたお金が増えなければ、それは負けと
みなします。株式投資のように、損失が思ったより小さく抑えられたからといって
ホッとするような人は、ギャンブラーにはまず、いないのです。

 

スーパーウイルスと気候変動

眠っていた怪物が目覚めるリスク

 

家の本棚に『人類が絶滅する6のシナリオ』という本がありました。

これは2013年に河出書房新社から単行本として刊行され、2017年に河出文庫として
再刊されたもの。

著者は、米国の科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の編集長を務める
フレッド・グテルという人です。

私が文庫を買ったのは2018年頃だったと思います。当時は飛ばし読みでパラパラッと
ページをめくって、そのまま本棚行きとなっていたのですが、改めて読んでみると、
ビックリするような内容が見つかりました。

第1章の《世界を滅ぼすスーパーウイルス》では、2009年に発生した
新型インフルエンザの世界的流行について、「幸運だったのだ」と書かれています。
新型のH1N1ウイルスが穏やかだった(致死率が低かった)からです。

そして、ウイルスがもっと凶悪だった場合に、事態はどうなったかという
予測ストーリーが付記されています。

 

そこには米国大統領と、米国疾病予防管理センター(CDC)所長のやりとりとして、
こんな会話が描かれています。

●米国大統領/「なぜ、この事態が予見できなかったんだ。なぜ、あらかじめ
  備えておかないのか」

●CDC所長/「ウイルスがこれほど恐ろしいものに変わることは、誰も想定して
  いませんでした。今回、流行している株はまったく未知なものなので、
  ワクチン製造には数カ月を要します。間もなく、病院のベッドや人工呼吸器は
  足りなくなり、医療従事者も不足するでしょう。そして、大勢の人が亡くなります」

解説にはこうあります。

短期間に大量の患者が出れば、人工呼吸器は非常に貴重になる。各病院は自由に
使えず、順番を待たねばならなくなる。病院のベッドはすぐに空きがなくなり、
それ以後、患者は自宅にいるしかない。

この本が現在のコロナ禍と似たような事態を、かなり正確に予測していたことが
分かります。


第3章の《突然起こり得る気候変動》には、以下のようなことが書かれています。

グリーンランドの氷床をドリルで掘削し、氷床コアを取り出して調べた結果、
 「グリーンランドの気温がわずか10年間で10度以上、上昇したという事例」が、
  過去10万年の間に10回は起きていることが確認された。

●「地球の気候はそう遠くない将来、突如として急激な変化を起こし、現在とは
  まったく異なる状態へと移行する恐れがある。いったん変化が起きてしまえば、
  元に戻すことはほとんど不可能であり、人類を破滅に導く可能性が高い」
  --という考えが、科学者の間では徐々に広く認められるようになってきている。

警告を発するために、ずいぶん怖い表現が使われているように思えますが、
日本に住む私たちにとっても、あながち他人ごとではなくなってきたような
気がします。

多発するゲリラ豪雨や上陸する台風の巨大化といった近年の傾向に加えて、
今年は夏場の長雨や北海道地方の高温など、日本列島における新たな異常気象の
兆しも見てとれます。

 

新聞報道によると、国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)は今年8月9日に、
「2021年~40年に、産業革命前と比べた世界の気温上昇が1.5度に達する」との予測を
発表しました。2018年の報告書で想定していたよりも10年ほど早いペースで、地球の
気温上昇が進んでいることになります。

今年は6月から7月にかけて、米国やカナダの一部地域で気温が摂氏50度前後まで
上昇し、両国では大規模な山火事が多発しました。

さらに、シベリアや極東地域でも平年を大きく上回る高温が続き、ロシアにおける
山火事の拡大も深刻さを増しているとのこと。

ロシアでは昨年(2020年)、ギリシャ一国分に相当する面積の土地が焼失し、
そのほとんどがシベリアなどの永久凍土帯だったそうです。

永久凍土で火事が続くというのも変な話ですが、冬場に雪で覆われて鎮火したように
見えても、地中の泥炭はくすぶり続けて、夏場に地表で発火するという仕組みです。
「ゾンビ火災」と呼ばれるこの現象は、地球温暖化が招いたものと言われており、
今年もその影響が大きいと考えられます。


永久凍土のなかには、1万年以上かかって植物などが不完全に分解され、
二酸化炭素やメタンガスとして閉じ込められています。

それらが火災などで放出され、地球温暖化をさらに加速させる可能性が
指摘されていますが、もうひとつ、恐ろしいリスクもあります。

2016年には西シベリアで「炭そ菌」の感染が広がり、少年ひとりと2000頭以上の
トナカイが死亡する事件がありました。75年以上前のトナカイの凍結死骸が溶けて、
感染源になったことが確認されています。

科学者の間では、永久凍土のなかで休眠状態にある怪物(細菌や病原体)が、
温暖化によって目覚めることに警戒が強まっているようです。

 

露呈するかもしれない災厄に目をつぶる


再び、『人類が絶滅する6のシナリオ』の話に戻ります。

同書の《はじめに》には、こんなことが書かれています。

●科学者、技術者という人種は一般に、楽観的な考え方をする。彼らは自分たちが
  研究・開発するものを愛しており、それについて楽しそうに話すのが常だ。

●気候変動や生物兵器に関して盛んに警告を発している人たちであっても、
  その態度はふつう、前向きであり、悲惨な事態の到来をどうすれば防げるか、
  ということを主に話す。

●未来を正確に予測することはできないが、「最悪の場合、何が起こり得るか」を
  考えてみるのは良いことだと私は思う。そうすることで、私たち人類がいま、
  地球のなかでどういう存在なのかがよくわかる。


人間の心理には、ある目的を達成したり、ある状態を維持するために、
いつか露呈するかもしれない災厄やリスクに目をつぶるという傾向が
あるように思います。

それは楽観的というよりも、無謀や鈍感と呼んだ方がいいのかもしれません。

第二次世界大戦後の日本では、経済的な繁栄を達成・維持するため、
人びとの間にあまねく、そうした心理が広がっていったような気がします。

その代表が、さまざまな公害や交通事故の問題ですが、かつてに比べて
公害による健康被害や交通死亡事故が減った後も、人びとの間に無謀や鈍感は
居座り続けています。

たとえば以前、ウォークマンや携帯電話、家庭用ゲーム機の普及によって、
自閉症的な人間が増えると指摘した人がいました。これらが発する電磁波が、
脳に何らかの影響を及ぼすという意見もありました。

そんな指摘や意見は、いまではもう都市伝説の類いかもしれませんが、
パソコンやインターネットも加わり、全体的な傾向として人びとの自閉化は
確実に進んだと、私は感じています。

 

私の性質をよく知っている友人ならば、「それはお前がデジタル嫌いだからだ」と
一笑に付すことでしょう。

また、最近の私は、新幹線の「のぞみ」は「G(加速度)がかかって不快だから」と、
「ひかり」や「こだま」にしか乗らなくなりました。

何かと科学技術に不信感を抱くのは、私が歳を取ったせいかもしれません。

 

それはともかくとして、たとえば2011年の東日本大震災については、
どう考えればいいのでしょうか。

震災直後、何かにつけて「想定外」という言葉が使われましたが、実は前年の
2010年に産業技術総合研究所の研究グループが、大地震と大津波の可能性を
国に報告していたという事実が、大震災の後になって判明しました。

2009年には同研究所の研究者が、869年に起きた貞観(じょうがん)地震による
津波で運ばれた堆積物の研究をもとに、東京電力に対して、福島第一原子力発電所
地震想定に関する見直しを求めていました。

つまり、国と東京電力が想定している規模以上の地震津波が発生して、
原発が大きなリスクにさらされる可能性を指摘していたわけです。


いまさらこんな話を持ち出すまでもなく、「そら見たことか」と
言いたくなるような事態は、コロナ禍の現在も多数、進行中です。

このままだと近い将来、毎年のように過去には経験したことのない異常気象が発生し、
毎年のように新種のウイルスが蔓延することになっても不思議ではありません。

それでも人びとは、根本的な問題解決には取り組まないのかもしれません。

「地球に住めなくなったら、宇宙に出ていけばいいや」。

そんな風に言い出す金持ちが増え、それを科学技術が後押しするような日が
意外と近いのかもしれないと、最近の宇宙開発や宇宙旅行をめぐる空騒ぎを
見ていて思います。

 

投資の世界になじむ方法

ファンド格付けを利用する

 

私たちが証券会社や銀行などでふつうに購入できる投資信託は、だいたい
5000本程度あるといわれています。

それらを投資対象や投資方針などに沿って、いくつかのカテゴリーに分類し、
カテゴリーごとに各商品の格付けをおこなっているのが、投信評価会社です。

投資信託それぞれについて、格付けは星の数などで表されますが、そこには
過去1年や3年、10年といった期間ごとに、その投資信託が記録してきた
リターン実績なども示されています。

こうした格付けは、数ある投資信託のなかから、私たちが購入すべき商品を
選ぶ際の参考になります。

同時にまた、私たちは格付けをひとつの取っかかりとして、投資や金融の世界に
なじんでいくことも可能だと思います。

複数の投資信託についてリターン実績などを比較する過程で、さまざまな気付きが
生まれるほか、見慣れない専門用語などについて調べる機会も出てくるからです。


投信評価会社として有名なモーニングスターの格付けを使って、
実際にどのような手順で投資信託の比較をおこない、どのような発見や知識が
得られるのか、試してみたいと思います。

モーニングスターのサイトで「投資信託」のページを開き、上部にある
「ファンドを探す」というボタンから「商品名、販売会社から選ぶ」という
項目を選ぶと、「商品名、販売会社で検索」というページが出てきます。
(ファンドとは、投資信託のことです)


商品名の欄に、たとえば「つみたてNISA」の対象商品になっている
『たわらノーロードTOPIX』を入れて、検索してみます。

「ファンド検索結果」のページで、ファンド名の『たわらノーロードTOPIX』を
クリックすると、「スナップショット」という商品概要が掲載されたページが
出てきます。

そこでは、この商品が「国内大型ブレンド」というカテゴリーに分類され、
格付けが「★★★」で、信託報酬が年0.19%であることなどが確認できます。

カテゴリーの「国内大型ブレンド」とは何なのか気になりますが、
後で調べることになるので、ここではスルーしておきます。

基準価額の下部にある「リターン」をクリックすると、過去の期間別に1カ月、
3カ月、6カ月、1年、3年(年率)、5年(年率)、10年(年率)の
トータルリターンを一覧できるページが出てきます。

『たわらノーロードTOPIX』は設定から5年が経っていないので、
トータルリターンの記載は「3年(年率)」までです。

「トータルリターン」については、

(評価金額+受取分配金の累計+売却金額の累計)-購入金額の累計

などと、投資関連の雑誌などには書いてあります。

これでは何のことだかよく分かりませんが、要するに、一定期間内に投資信託から
得られた利益を、受け取った分配金や一部売却による換金分、負担したコストを
含めて総合的に計算したものです。

これに対して、いわゆる「騰落率」は、一定期間内に投資信託の基準価額が
どれだけ上下したかを表すものであり、その計算には分配金や手数料などは
含まれていません。


ところで、『たわらノーロードTOPIX』は、TOPIXに連動するインデックス型の
投資信託です。「つみたてNISA」の対象商品から同じタイプの投資信託を選んで、
リターンを比較してみることにします。

「商品名、販売会社で検索」というページの商品名の欄に、たとえば
『ニッセイ TOPIXオープン』と入れてみます。

こちらは信託報酬が年0.55%と、『たわらノーロードTOPIX』より高くなっています。

今年7月31日時点のトータルリターン実績を2つの投資信託で比較すると、
過去1カ月から3年(年率)までの全期間で『たわらノーロードTOPIX』の方が若干、
リターンが高くなっています。

その差は明らかに、信託報酬率の違いからくるものでしょう。

大型株とブレンドスタイルの意味


『たわらノーロードTOPIX』のリターンで過去3年(年率)の欄を見ると、
トータルリターンが4.99%、カテゴリーが5.16%、順位が180位、ファンド数が
327本と書いてあります。

これはつまり、「国内大型ブレンド」というカテゴリーに分類され、
過去3年以上の投資実績をもつ投資信託は327本あり、それらの平均リターンが
5.16%で、『たわらノーロードTOPIX』のリターン水準は上から180番目だった、
ということです。

それでは、「国内大型ブレンド」というカテゴリー内でリターン水準が上位の
投資信託とは、どんな商品なのでしょうか?


もういちど投資信託のページに戻って、上部の「ファンドを探す」という
ボタンから「詳細条件からファンドを選ぶ」という項目を選ぶと、
「詳しく条件を設定して検索(詳細検索)」というページが出てきます。

ファンドタイプという項目のカテゴリー欄で「国内大型ブレンド」を選び、
ファンド種類の欄で「ETF・DC専用・SMA専用を除く全ファンド」という
項目にチェックを付けて、検索を実行します。


検索を実行する前に、ここで少し寄り道をしてみます。

ポートフォリオという項目の「株式の場合、投資スタイル」という欄を見ると、
そこには大型株・中型株・小型株とバリュー・ブレンド・グロースが
マトリックスになった四角形が書いてあります。

このことから、「国内大型ブレンド」とは日本国内の株式のうち、
規模でいえば大型株に、投資スタイルでいえばバリューとグロースの
両方(ブレンド)に該当する銘柄を指すことが分かります。

また、そのような銘柄を投資対象とする投資信託を、「国内大型ブレンド」に
分類しているのだろうということが推測できます。

「大型株」について調べてみると、おおむね次のようなことが分かります。

●大型株とは一般に、時価総額が大きく、流動性が高い銘柄のことを指す。
●発行株式数、売買量ともに多いため、相対的にみて株価が大きく変動する
  ケースは少ない傾向にある。
東京証券取引所では、東証1部上場銘柄を時価総額の大きさと流動性の高さで
  3つのグループに分類し、上位100位の銘柄までを大型株、それに次ぐ
  400銘柄を中型株、大型株と中型株以外の銘柄を小型株と定義している。


東京証券取引所の定義によれば、TOPIXの対象となる東証1部上場銘柄には
大型株、中型株、小型株のすべてが含まれることになります。

すると、TOPIXに連動するインデックス型の投資信託を、モーニングスター
「国内大型ブレンド」に分類しているのはおかしいことになりますが、
TOPIXにおける銘柄の構成比率は時価総額に比例して大型株ほど大きくなるため、「TOPIXは、ほぼ大型株」とみなしているのだと思われます。


バリューとグロースについては、以下のような説明が一般的です。

●バリュー株(割安株)とは、売り上げや利益の成長がさほど期待できないなどの
  理由により、現時点の株価が本来的な企業価値を考慮した水準に比べて
  安い(割安)と考えられる銘柄を指す。知名度の低い企業が多いことから、
  堅実経営を続けているような場合でも、投資家の人気は低くなりがち。

●グロース株(成長株)とは、売り上げや利益の成長率が高く、その優れた
  成長性ゆえに今後の株価上昇が期待されるような銘柄を指す。革新的な商品や
  サービスによって市場シェアを拡大し、増収増益を続けているケースが多く、
  一般に投資家の人気が高いという特徴がある。


日本株では、たとえば三菱商事などの大手商社は「万年バリュー株」と
呼ばれているし、最近のグロース株としてはモーターメーカーの日本電産や、
工場自動化(FA)のキーエンスなどが注目されています。

いずれもTOPIXを構成する銘柄なので、TOPIXにはバリュー株とグロース株の
両者が混在していることが分かります。

つまり、TOPIXに連動するインデックス型の投資信託は、投資スタイルでいえば
ブレンド」に分類されるわけです。


さて、「詳細条件からファンドを選ぶ」から「国内大型ブレンド」を選択して
検索を実行すると、格付けの高い順にずらっとファンド名が出てきます。

上の方に『コモンズ30ファンド』というファンド名がありますが、これは実は
「つみたてNISA」の対象商品であり、しかも対象商品のなかでは数が少ない
アクティブ型の投資信託です。

ファンド名をクリックして内容を調べると、信託報酬が年1.08%、
購入時手数料率(販売手数料率)が3.3%などと書いてあります。

リターンのページを見ると、トータルリターンは1年が35.40%、
3年(年率)が7.76%で、『たわらノーロードTOPIX』の29.53%(1年)、
4.99%(3年年率)を上回っています。

また、10年(年率)も12.15%で、『ニッセイ TOPIXオープン』の10.36%を
上回っています。

TOPIXに連動するインデックス型の投資信託が、原則としてTOPIXを構成する
2000銘柄以上に投資するのに対して、『コモンズ30ファンド』は常に
30銘柄程度にしか投資しないようです。

「スナップショット」のページから「目論見書」という項目を選んで、
「月報」のPDFを開くと、それぞれの投資信託について、今年7月末現在の
組入上位10銘柄を見ることができます。

『たわらノーロードTOPIX』と『ニッセイ TOPIXオープン』は、同じTOPIX連動型の
商品なので、当然のことながら組入上位10銘柄も同じです。

一方で『コモンズ30ファンド』の組入上位10銘柄を見ると、いずれも
東証1部上場銘柄なのですが、TOPIX連動型の上記2本とは1銘柄が同じだけで、
9銘柄は異なっています。

これらのことから、『コモンズ30ファンド』のいわば「30銘柄厳選投資」は、
いまのところ功を奏しており、販売手数料や信託報酬というコスト面の
不利にもかかわらず、TOPIXに連動するインデックス型の投資信託を上回る
リターンをあげることに成功していることが分かります。

 

投資の情報は「使えない」のか?

難しくて、ニーズにも合っていない

 

いま世の中には、「投資」や「株式」「投資信託」などに関連した書籍、雑誌、
さらにはネット上の記事があふれかえっています。

コロナ禍で自分についても社会についても、将来が見通しづらくなるなか、
新たに投資を始めようと考える人も増えているようです。

そんな投資の初心者にとって、ちまたの情報が本当に有用かといえば、
なかなかそうとも言い切れないのではないでしょうか。

ポイントは2つあると思います。

ひとつは、投資に関する情報が、初心者にとっては理解しがたいこと。

投資や金融についての聞き慣れない専門用語はもちろん、小難しい
セオリー(理論)のような話がたくさん出てくるうえに、それらが一般の
人びとでも分かるレベルまで、十分にかみ砕かれていないケースが目立ちます。

そこには、人間が陥りやすい「認知バイアス」(偏見や先入観などによる
非合理な判断)が関係しているのかもしれません。

今年の4月に発刊された『認知バイアス事典』(フォレスト出版)という本には、
こんなことが書かれています。


●知識の呪縛

さまざまな分野において、知識を持っている人は「自分が知っていることは
他人も知っているだろう」と思い込み、知識を持たない人の立場から物事を
考えることが難しくなってしまう現象。


金融業界はいまでこそ「貯蓄から投資へ」などといって、一般の人びとの間にも
投資を普及させようと躍起になっていますが、それもここ15年ぐらいの話です。

かつては一部の金持ちや投資マニアを相手に、悪い言い方をすると「殿様商売」を
やっていれば済んだので、そもそも一般向けに話をするのが不得手なのでしょう。

ただし、この問題については若干、いたし方ないと思える部分もあります。

科学(サイエンス)の分野も同じですが、ある現象なり考え方なりを説明する場合に、
相手が最低限の知識と理解を持ち合わせていないと、どうしてもそこから先の話に
進めないということが起こりがちです。

投資に関する話は、私たちがふつうに生活するうえでは必要ないものであり、
よほど興味をもって接しなければ、知識も理解もなかなか得られないのでは
ないでしょうか。

その意味では、一般の人びとに投資への興味を持たせるような努力や工夫が、
金融業界には足りなかったということもできそうです。

 

もうひとつのポイントは、投資に関する情報が、初心者の素朴なニーズに
マッチしていないこと。

投資の初心者にかぎらず、人びとが本当に知りたいのは結局のところ、
「どの株式や投資信託を買えば儲かりそうなのか」ということでしょう。

しかし、それを「万人に共通の普遍的な情報」として公に提供するのは
難しいのが現実です。

これから何年ぐらいの時間をかけて、どれぐらいの利益を得たいのか、
購入から売却までの過程で価格がどの程度、上下に動いても許せるのかなど、
人によって投資のニーズは異なります。

つまり、一人ひとりの個人ごとに、購入に適した金融商品は異なるのです。

また、金融商品は何種類かを組み合わせることによって、最終的な利益が
安定したり、投資期間中の価格変動幅が小さくなるなど、ひとつの
金融商品だけでは得られないような効果が生じる場合があります。

こうしてみると、投資の世界では「どれを買えば儲かりそうなのか」よりも、
「自分が買うべきなのは、どれと、どれなのか」という観点の方が重要だと
考えられます。

情報を提供する側からすれば、個人の投資相談に乗るようなかたちで、
一人ひとりに適した金融商品を紹介することは可能だとしても、
投資ニーズがまちまちな多くの人を相手に「万能なお薦め商品」を
紹介することは、困難かつ無責任といえるわけです。

 

購入を進める過程で情報に目がいく

 

投資とギャンブルを一緒にするなと言われそうですが、私は競馬が好きなので、
無理を承知で競馬というギャンブルに照らし合わせながら、投資の情報についても
考えてみたいと思います。

競馬新聞やスポーツ新聞の競馬欄には、膨大な情報が掲載されています。

ギャンブルのなかでも、とくに競馬は事前に検討する項目が多いことで有名です。

過去3~5走の成績、ローテーション、馬体重、調教、持ちタイム、血統、馬場適性、
コース適性、距離適性、騎手、負担重量、レース展開、脚質、枠順、予想オッズ…。

私がひとつのレースごとに、日常的に検討している項目は、ざっとこれだけあります。

そこに厩舎のコメントや、トラックマン(予想者)の印、予想内容などが加わります。

はたして競馬の初心者は、こうした情報の意味を理解し、使いこなすことが
できるでしょうか。

私も最初は、競馬新聞のどこをどのように見て、何をどう理解すればいいのか、
まったく分かりませんでした。

投資と同じで競馬にも、聞き慣れない専門用語がたくさん出てくるし、何度も
馬券を買って経験を積まないと理解できないセオリーのようなものもあります。

幸か不幸か、私は「はずれ馬券」という授業料を払いながら、徐々に自分が
競馬の世界になじんでいくことを、嬉しく楽しく感じることができました。

だからこそ、さまざまな項目を検討すること、つまりは競馬の学習を続けることが
できたのだと思います。

競馬のレースは、おおむね1分~3分程度の時間で決着がつきます。

競馬という勝負の結果は、1レースの単位でいえば、非常に短期で出るわけです。

投資という行為は、その意味するところがギャンブルとは違うので、
もちろん同列で比較することはできません。

でも、あえて言うならば、デイトレードのような一部の例外を除いて、
投資は結果が出るまでにそこそこ長い時間がかかります。

たとえば10年後にようやく結果が出るような行為について、あれこれ学習したり、
知識を身に付けたりするのは、面倒くさくて意味のないことだと思う人が
多いかもしれません。

だから、手っ取り早く儲かりそうな金融商品があるなら、それを知りたいという
気持ちはよく分かります。


私はたまたま若い頃から競馬に親しんでおり、仕事で投資や金融の情報に
触れる機会が多かったので、競馬と同じような感覚で、投資や金融の学習も
続けることができました。

しかし、そういう環境に恵まれていなかったら、たぶん私も面倒くさがって、
興味を持てなかったような気がします。

最近はインデックス型の投資信託を何本か選んで、ひたすら積み立てる
「ほったらかし投資」という考え方がある程度、支持されているようです。

どうしても投資や金融について考えることが面倒くさく、ほったらかした結果が
どうなっても構わないという人は、それでいいのだと思います。

そういう人は恐らく、最初に選んだ商品以外に、新たに他の投資信託
購入する気はないのでしょう。

一方で、いろいろなタイプの投資信託を購入して、どういう商品の組み合わせが
よりベターなのか、試してみたいという人もいるはずです。

投資や金融の世界になじむためのヒントは、その辺りにあるのかもしれません。

1本目から2本目、3本目と購入を進めていく過程で、投資に関する
自分の好みや傾向のようなものが分かってくるし、過去に購入した商品が
「なぜ儲かったのか」や「なぜ儲からなかったのか」といったことも、
気になってくるはずです。

そうなって初めて、小難しくて面倒くさい投資や金融の情報にも、
自然と目が向いていくのではないでしょうか。