解✦談

解りやすく、解きほぐします。

イントロに関する考察

最近はイントロが短い曲じゃないと、ヒットしないどころか、
聴かれもしないようですね。

ある調査データによると、サブスクリプションサービスで音楽を聴く人の25%は、
最初の5秒間で気に入らないと、次の曲へ移ってしまうとか。

カラオケでもイントロや間奏が長い曲は、同席者の手前、気まずかったり
手持ち無沙汰だったりするのが嫌なので、歌いたくても選ばない人が結構いる
みたいです。

スターダストレビューの《トワイライト・アベニュー》は、イントロが
7秒間なので、歌の始まりまで持つかどうか際どいところです。

ほんの3秒ほど我慢してくれれば、劇的かつ美しいサビのメロディで歌が
始まりますが、「イラチ」な人はこの名曲を知らずに終わる可能性もありますね。

原田知世の《時をかける少女》は、イントロで2つのコードの繰り返しが2回、
15秒間続きます。

その後に高低の音階をかけ巡る、ユーミンの荒業が展開されるわけですが、
まさか、この曲も最近は知らない人が多かったりして。

まあ、人それぞれなのだから、好きにすればいいでしょう。

レッド・ツェッペリンの《天国への階段》や、イーグルス
ホテル・カリフォルニア》は、イントロが1分弱あります。

ピンク・フロイドの《タイム》は2分以上。

これらロックの定番曲とかプログレなどは、そもそも若者や現代人の
興味から外れているので、最初から選択肢にも入らないか…。

ツェッペリンといえば、《When The Levee Breaks》のイントロは不穏な音が
1分20秒以上も続きますが、その不気味さがなんともいえず格好いい。

ローリング・ストーンズの《Gimme Shelter》(50秒程度)や、
キング・クリムゾンの《21st Century Schizoid Man》(これは短い)など、
不穏さゆえに魅力的なイントロもたくさんあります。

もちろん、これらはヘヴィメタを好む人にとっては、なんてことない
イントロでしょうけどね。

 

      ✤      ✤      ✤      ✤

 

私はイントロが長いか短いかを気にしたことはないけれど、
イントロについてひとつ、気付いていたことはあります。

ビートルズには、イントロのない曲が非常に多い。

年代順に代表曲を挙げてみます。

《All My Loving》《If I Fell》《Can’t Buy Me Love》《No Reply》
《I’m A Loser》《Help!》《Nowhere Man》《Girl》《Paperback Writer》
《Hello, Goodbye》《Hey Jude》《The Long And Winding Road

このほか、《Penny Lane》や《For No One》《Oh! Darling》など、
イントロが1音しかないような曲もあります。

ビートルズの楽曲は、とくに中期のアルバム『リボルバー』までは、
全体の長さが1分台や2分台のものがほとんどです。

だからイントロや間奏はなるべく省いて、ポールやジョンたちの声を
できるだけ多く聴いてもらおうという戦略だったんでしょうか。

これ、現代のサブスク・ユーザー向きですね。

でも、《While My Guitar Gently Weeps》はイントロが少し長いから
飛ばされてしまって、エリック・クラプトンの泣きのギターが聴いて
もらえないかもしれません。

日本でビートルズに影響を受けたミュージシャンは数知れず。

そのなかで、たとえばチューリップの財津和夫は、イントロについても
影響を受けたのではないかと思われます。

《心の旅》《夕陽を追いかけて》《Someday Somewhere》などの
ヒット曲、代表曲にはイントロがありません。

青春の影》《ぼくがつくった愛のうた》《ふたりがつくった風景》など、
そこそこヒットした曲も1音だけのイントロです。

《夏色のおもいで》《虹とスニーカーの頃》のヒット曲は、
ともにイントロが3秒程度。

青春の影》は初めて聴いたとき、曲名からプロコル・ハルムの《青い影》との
関連を想像しました。しかし、なんのことはない、イントロも含めて詞・曲ともに
ビートルズの《The Long And Winding Road》の影響でしょうね。

 

      ✤      ✤      ✤      ✤

 

邦楽でイントロが魅力的といえば、大瀧詠一が思い浮かびます。

とにかく、イントロの最初の1音からして「これしかない」という
感じの曲が多い。

私がいちばん好きなのは、ラッツ&スターに提供した
《Tシャツに口紅》(編曲は井上鑑)です。

17秒ぐらいのイントロですが、大袈裟にいえば、最初のピアノの音を
聴いた時点で、もはや名曲確定。

森進一に提供した《冬のリヴィエラ》(編曲は前田憲男)といい、
なんてキャッチーで美しいイントロでしょう。

本人歌唱の曲では、《オリーブの午后》《白い港》《雨のウェンズデイ》などは、
イントロだけでも繰り返し聴きたくなるほど。

なかでもドラムで始まる《ペパーミント・ブルー》は、
大瀧トロピカルサウンドの真骨頂かつ集大成のような存在では
ないでしょうか。夏には必ず聴きたくなるイントロです。

私が好きなイントロには、いくつかのパターンがあるようです。

たとえば邦楽で、ひたすら美しいと思うのが

ペドロ&カプリシャスの《ジョニーへの伝言》
ダカーポの《結婚するって本当ですか》
山口百恵の《夢先案内人》など。

なぜか心が熱くなるのが、

RCサクセションの《わかってもらえるさ》
五つの赤い風船の《遠い世界に》
ラブポーションの《胸いっぱいのフォトグラフ》など。

聴いていた当時を思い出してキュンとくるのが、

竹内まりやの《セプテンバー》
斉藤由貴の《卒業》などです。

洋楽では、ひたすら美しいと思うのが

ミッシェル・ポルナレフの《Holidays》《Love Me, Please Love Me》
アバの《Thank You For The Music》《The Winner Takes It All》など。

なぜか懐かしい感じがして胸が騒ぐのが、

ビージーズの《マサチューセッツ
J.D.サウザーの《You’re Only Lonely》など。

いつ聴いても心が温まるのが、

ドーンの《幸せの黄色いリボン》
フェアーグラウンド・アトラクションの《A Smile In A Whisper》などです。