解✦談

解りやすく、解きほぐします。

株価の割安さを判断する

株価という評価がいつも正しいとは限らない

 

株式投資をやるとき、私たちがどうしても自分で決めなければならない
「3W1H」があります。

●When=いつ買うか
●Where=どの証券会社を使うか
●What=どの銘柄を選ぶか
●How much=いくら買うか

このうち最も重要かつ、最も難しいのが「What」、つまりはどの銘柄を
選ぶかということです。

たとえば初心者なら、まず自分にとって馴染みのある企業を選ぶという
方法があります。

ふだん、よく買う商品や、よく使うサービス、あるいは憧れのブランドなど、
日常生活を振り返ってみて思い浮かぶ企業があれば、その株式を買ってみる。

それから、日常でこれといった接点はなくても、とりあえず知っている
企業を選ぶという方法もあります。

名前を聞いたことがない企業に比べれば、知っている企業のニュースは
頭に入ってきやすいし、事業内容もイメージしやすいのではないでしょうか。

いずれにしても、私たちは株式の銘柄を選ぶとき、そこに何らかの基準を
設けたいと考えるわけです。

馴染みがある、知っている、というだけでは投資の基準として心もとないし、
いまいち納得できないと思う人もいるでしょう。

そんな人は、いまいちど以下のことを思い出してみるといいかもしれません。

●投資の基本的な意味=金融商品を安く買って高く売ることで、
  差額分の利益を狙うこと

安く買えることは、きわめて重要な、銘柄選びの基準のひとつです。

さて、それでは「株式銘柄を安く買う」ためには、どうすればいいのでしょうか。

たとえば、ある銘柄の株価が800円だったとします。

この800円という数字は、たくさんの投資家が総意として、その企業に対して
くだした採点(評価)と考えることができます。

投資家が何をもって採点をくだしているかといえば、企業の収益性や競争力、
ビジネスモデルなどを自分なりに分析して、その経済的な価値(企業価値)を
割り出しているわけです。

しかし、株価がいつも企業価値を正確に反映しているかといえば、
そうとも限りません。

技術力が高くて、業績が安定している企業でも、認知度が低いといった
理由で過小評価されていることがあります。

逆に、業績が不安定でも、新しい技術が投資家の大きな期待を集めて
過大評価される場合もあります。

つまり、前述した800円という株価が、本来は1000円ぐらいでもいいのに
過小評価されていたり、500円ぐらいが妥当なのに過大評価されている
ケースがあるということです。


株価が一時的に安すぎたり高すぎる水準にあっても、中長期的にみると、
本来的な企業価値に見合った株価(適正な株価)に収束していく例も
少なくありません。

ある銘柄の株価が現時点で適正な株価より安いと考えられるならば、
その銘柄は「割安」の状態にあり、本来よりも安い株価で買うチャンスと
言うことができます。

そんな銘柄を見つけて投資することができれば、それが将来的に
適正な株価まで戻る(値上がりする)可能性は高く、収益につながる
期待が大きいわけです。

 

株価指標という客観性を持ち込むことの意義


ただし、ある銘柄の適正な株価を割り出すことは非常に難しいのが現実です。

そのため、株価が割安かどうかを判断する場合には、企業の利益や
自己資本などに対して現在の株価がどのような水準にあるかを示す
「株価指標」を使うのが一般的です。


代表的な株価指標として、PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)があります。

●PER(単位:倍)=株価÷EPS(1株あたり純利益)

         ※EPS=予想連結純利益÷発行済み株式数

●PBR(単位:倍)=株価÷1株あたり自己資本

         ※1株あたり自己資本自己資本÷発行済み株式数

PERとPBRについて、それぞれ突きつめて考えると、けっこう奥が深くて
難しいので、ここでは大まかな意味だけにとどめておきます。

株価を利益で割って求めるPERは、企業が稼ぎ出す1年間の利益の何倍まで、
その株式銘柄が買われているかを表します。

企業が急速に利益成長を遂げているような場合には、さらなる成長に対する
期待感から、投資家が先回りしてその株式を買うため、PERが高くなりがちです。

反対にPERが低ければ、その銘柄には投資家の買いがそれほど入っていない、
すなわちお買い得(割安)な可能性があると考えられます。

 

PBRの計算式に出てくる1株あたり自己資本は、企業の解散時に株主へ返還される
1株あたりの金額に相当します。

PBRが1倍を下回っている場合、その銘柄は「投資家がいま買って企業が解散すると、
それだけで儲かる」ことになります。

投資家にとって企業の利益成長を待つよりも、解散した方が手っ取り早く
儲かるというのは本来的には異常なので、PBRは1倍を十分に超えているのが
自然な姿といえます。

そのため、PBRが1倍を下回っているような銘柄は、いずれ通常の状態まで
株価が戻る(上がる)可能性が高く、お買い得(割安)と見なすことができます。

このように、PERもPBRも基本的には倍率が低い方が割安と考えられますが、
それぞれ注意点もあります。

PERが低い銘柄は、投資家が企業の成長を期待していないことの表れと
見ることもできます。

実際にPERは、成長産業の方が成熟産業よりも高くなりがちなため、
「成長産業に属する銘柄」と「成熟産業に属する銘柄」の間でPERを
比較しても、それほど意味はありません。

PBRが低い銘柄は、企業が投資家から過小評価されている場合もあれば、
資本効率が悪いなどの理由で、投資家から見放されている場合もあります。

ある銘柄の株価が割安かどうかを判断する場合には、PERやPBRを同業他社と
比較したり、業種ごとの平均値と比較するなど、多角的に「倍率の理由」を
探ることが大切です。

また、割安さという基準を使うことで、株式投資の納得度は大なり小なり
高まりますが、それがそのまま株式投資の成功につながるわけではありません。

投資が上手くいっても、いかなくても、そこに自分の好みや勘という主観だけでなく、
「数字という客観性」を持ち込むことに意義があるのだと思います。

それによって、私たちが株式投資の結果や途中経過を考える際に、ある程度の
根拠にもとづく冷静な分析や検証が可能になるからです。