解✦談

解りやすく、解きほぐします。

なぜ投資のような面倒くさいことをやるのか?

「預貯金+αのリターン」を追求する

 

投資は極端な話、お金さえあれば、誰でもできます。

しかし、誰でも投資をやって、うまくいくわけではありません。

多くの人にとって、投資は「非日常の世界」です。

投資について少しでも理解しようと思ったら、日常生活では必要ない
専門用語や数字、理論などの知識を、ある程度は身につける必要があります。

投資のゴールをいつに設定するかは人それぞれですが、そのゴールに
到達するまでに、いちども投資で失敗しない人は、恐らくいないはずです。

私たちは何度かの失敗も含めて、投資という非日常の経験を積み重ね、
そこからまた何かを学んでいく必要もあるのだと思います。

しかも、投資の知識や経験が十分にある人でも、必ずしも最終的にゴールが
満足いくものになるとは限りません。

投資とは、それほど不確実で、はっきりいって面倒くさいものです。

多くの人にとってはそんなこと、「やりたくない」というのが本音でしょう。

そもそも私たちは、どうして投資などという不確実で面倒なことを、
やろうと考えるのでしょうか。

その動機はほとんどの場合、将来の生活に向けて預貯金の利息だけでは
物足りないから、あるいは、心もとないからだと思われます。

大手都市銀行メガバンク)の定期預金の利率は現在、預入額が1000万円以上の
「大口定期10年物」でも年利がたったの0.002%です。

いくら元本保証で安全とはいっても、これではもはや「雀の涙」と呼ぶのも
むなしくなるレベルです。

つまり、私たちにとっての投資とは、安全資産である預貯金に何らかの
リスク資産を加えることで、「預貯金+αのリターン」を追求するという
意味があることになります。

「+αのリターン」をできるだけ大きくしたいならば、株式への投資比率を
増やせばよい、というのが一般的な考え方です。

ただし、それは同時に、投資した資金が一時的もしくは最終的に大きく
減ってしまう可能性が高まる、ということでもあります。

投資資金とは別に、生活資金が十分に確保されていて、たとえ投資資金が
大きく減ることになっても構わないと考えられる人ならば、株式への投資比率を
高めることができます。

結果として、そういう人ほど、より高い「+αのリターン」を追求することが
可能になるわけです。

反対に、生活資金は十分にあるけれど、投資資金が減るのはどうしても
許せないという人や、生活資金がまだ十分に確保されていないという人は、
より高い「+αのリターン」を追求するのはあきらめて、株式への投資比率を
低めにした安定志向の投資をめざすべきなのかもしれません。

安定志向の投資として、まず思い浮かぶのが、日本国債を買って満期償還まで
持ち切るという方法です。

たとえば「個人向け国債は、私たち一般の個人でも買える日本国債です。

満期3年の固定金利型、満期5年の固定金利型、満期10年の変動金利型という
3種類が用意されていて、多くの銀行や証券会社で取り扱っています。

いずれも毎月(年12回)発行されていて、1万円から購入が可能。
購入手数料はかかりません。購入から1年が経過すれば国が額面で
買い取ってくれる、事実上の元本保証商品です。

投資が初めての人は、どれを選ぶべきか迷うかもしれませんが、
基本的には満期10年の変動金利型を選んでおくのが無難です。

これは3種類のなかで唯一、利率が半年ごとに見直される仕組みになっていて、
将来的に世の中の金利が上昇すると、この国債の利率も連動して上昇します。

つまり、世の中のインフレ(物価上昇)に合わせて、国債から得られる利息も
増えることになるため、インフレによる購買力の低下を補う効果が期待できます。

さて、直近の利率は3種類とも年0.05%となっています。

前述した「大口定期10年物」と比べれば、25倍にあたる大きな数字ですが、
それでも100万円を購入して年に500円のリターンというレベルなので、
この利率で満足できるという人はほとんどいないと思われます。

資産が10億円とか100億円あるような人ならば、元本保証だから、
資産の保全を考えるうえでは最適の商品なのかもしれません。

しかし、私たち一般の個人にとって、現状の個人向け国債はリターンが
あまりに小さすぎるため、資産を増やすには向かない商品といえるのです。

ふつうの個人は、こんな風に考えるはずです。

「預貯金+αのリターン」を追求するのに、日本国債は向かない。

でも、株式への投資比率を高めるのは、価格下落のリスクが怖い。

ならば、日本国債と株式の「中間」に位置するような金融商品はないのだろうか。

そうして行き着くのが、海外の国債という選択肢です。

 

米国債も株式より安全とは言い切れない

 

海外の国債に投資する方法としては、いわゆる「外国債券ファンド」(投資信託)を
購入する手もありますが、証券会社などが扱っている既発債を利用すれば、
一般個人でも海外の国債を単体で買うことができます。

ある証券会社が販売している米国債をみてみると、今年10月29日現在、
残存期間(償還までの残り期間)が9年9カ月のもので利回りは年1.42%(複利)。

これをほぼ10年満期と考えて、日本の個人向け国債の変動金利型(満期10年)と
比べると、利回り水準は28倍以上も大きいことになります。

個人向け国債の変動金利型(満期10年)は、これから世の中の金利が上昇した場合、
連動して利率も上昇するため、現状の年0.05%という利率が今後10年間でどのように
変わっていくのか分かりません。

ただ、変動金利型(満期10年)の利率が年1.42%まで上昇するためには、
日本の長期金利が2%を超える水準まで高まる必要があり、そういう状況に
なることは当面の間、考えづらいのが実情です。

米国債の年1.42%という利回りは、やはり魅力的ということになります。

 

問題は、この米国債がドル建てであるために、為替変動の影響を受ける
いうことです。

私たちが外貨建ての金融商品に投資する場合、為替変動によって損益分岐点
どうなるかを、あらかじめ計算で求めることができます。

少しややこしいですが、計算式は

「現在の為替レート(円)÷{(1+利回り)の年数乗}」

なので、これに上記の米国債の数字をあてはめてみます。

米国債の購入時に為替が1ドル=113円だったとすると、10年後の損益分岐点
「113円÷{(1+0.0142)の10乗}=98.1円」となります。

この米国債に投資した場合、10年後に1ドル=98円程度まで円高が進むと
金利収入の蓄積分がなくなり、元本割れの恐れも出てくるわけです。

最近、円・ドル為替レートは円安の傾向が続いていて、専門家の間では、
今後もしばらくは円安傾向が続くという予想が多いようです。

円安が進めば、その分だけ米国債から得られるリターンは増えることになりますが、
10年後の円・ドル為替レートがどうなっているかについては、神のみぞ知る、です。

結局のところ、「預貯金+αのリターン」を追求するうえで、米国債
日本国債よりも高いリターンが期待できることは間違いないのですが、
一方で為替のリスクを負うことになるため、株式よりも安全で安定した
投資が
できるとは言い切れないことになります。

こんな風にして、人々の投資にまつわる悩みは募っていくのです。