解✦談

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投手の自責点はアテにならないのか?

7失点で自責点は0という不思議

 

10月25日(月)の千葉ロッテvsソフトバンク25回戦(ZOZOマリンスタジアム)で、
2回表にソフトバンクが一挙7点を奪いました。

千葉ロッテの先発投手・美馬は1回2/3を投げて、打者12人に6安打、
7失点でしたが、なぜか自責点は0となっていました。

驚いた私は、改めて失点と自責点の関係を知りたいと思い、いろいろと
調べてみたのですが、これがけっこう難しいのです。

ポイントはまず、投手の自責点の対象にならない得点というものが、
いくつかあること。

たとえば守備陣のエラー(ファウルフライの落球を含む)、捕手または野手の
打撃妨害や走塁妨害、捕手のパスボールなどが関係した得点です。

それから、守備側には「アウトにできる守備機会」というものが
設定されていて、そこには実際に打者や走者をアウトにした場合はもちろん、
「エラーなどによってアウトにできなかった場合」も含まれるそうです。

投手に自責点がつくのは、守備側が3つの「アウトにできる守備機会」を
つかむ前に、自責点の対象となる得点が記録された場合に限られます。

「アウトにできる守備機会」が3回あった後では、ひとりの投手がどれだけ
失点しても、その投手の自責点とはなりません。

ただし、イニングの途中で投手交替があった場合、それ以降のプレーについては
話が変わってくるようです。

なんだか分かったような、分からないような話なので、
千葉ロッテvsソフトバンク戦の「2回表」に照らし合わせて考えてみます。

先頭の4番・デスパイネがライトフライで、まず1アウト。

5番・中村晃のショートゴロを、千葉ロッテの遊撃手・エチェバリア
エラー(悪送球)して、1アウト1塁。

このエラーを「アウトにできる守備機会」に含めるならば、この時点で
「アウトにできる守備機会」は2回目ということになります。

6番・牧原のセンター前ヒットで、1アウト1・2塁。

7番・甲斐がライト前ヒットを打って1点が入り、なおも1アウト1・3塁。

ここで8番・リチャードがセンターへ犠牲フライを打って2点目が入り、
2アウト1塁。

これで「アウトにできる守備機会」は3回目です。

つまり、これ以降に入った得点については、美馬の自責点にはならないわけですね。

9番・柳町のツーベースでもう1点が入り、1番・三森のタイムリーでまた1点、
2番・釜元のヒットをはさんで、3番・栗原のツーベースでまた2点。

打者一巡の攻撃で、すでに6点が入っています。なおも2アウト2塁。

ここで千葉ロッテの投手は、美馬から岩下に交替しました。

その後、4番・デスパイネのタイムリーで、さらに1点が入ります。

5番・中村晃のフォアボールをはさんで、6番・牧原がファーストゴロ。

ようやくチェンジです。

全部で7点入りましたが、岩下が打たれて入った7点目は、もともとは
美馬が出したランナー(栗原)だから、岩下には失点も自責点もつきません。

 

想定外のピンチで粘れていない?

 

さて、ソフトバンクの7得点はすべて美馬が出したランナーが
生還したものなので、美馬の7失点というのは分かります。

分からないのは自責点です。

リチャードの犠牲フライが、千葉ロッテにとって3回目の
「アウトにできる守備機会」で、この時点でソフトバンクは2得点です。

その2得点は、1点目が甲斐のタイムリーで中村晃が生還したもの、
2点目がリチャードの犠牲フライで牧原が生還したものです。

このうち中村晃は、エチェバリアのエラーで出塁したのだから、
美馬の自責点ではない。これは分かります。

しかし牧原は、美馬がヒットを打たれて出したランナーであり、
その後にエラーなどは記録されていないので、この1点だけは
美馬の自責点になるのではないでしょうか。

それとも、本来はリチャードのセンターフライで3つ目のアウトとなる
はずだったから、現実には犠牲フライになって1点が入ってはいるものの、
この1点は自責点にカウントしないということでしょうか?

この辺がよく分かりません。


いずれにしても、その後に美馬は4連打を食らって、さらに5点を失っていますが、
それらはすべて自責点にカウントされないルールになっています。

こうしてみると、プロ野球投手の自責点防御率というのは、
意外とアテにならないものではないかと思ってしまいます。

失点が多いのに自責点は少ないというケースもありそうなので、
実際に今年の投手成績を確認してみました。

セ・パ両リーグで規定投球回数に達している投手の失点と自責点をみると、
たとえば広島の九里は失点72に対して自責点が62防御率3,88)、
ソフトバンクの石川は失点70に対して自責点が59防御率3.40)と、
その差が10点以上も開いています。

ちなみに前述の千葉ロッテ・美馬は、規定投球回数に達していませんが、
失点72に対して自責点が63防御率4.92)です。


こういう数字をどのように解釈すればいいのでしょうか。

私は現在、以前に比べてプロ野球の試合をほとんど観なくなったうえに、
ファンでもないチームの投手については普段から数字も確認しないので、
余計に分からないのですが、失点と自責点の差が大きい投手は、
野手のエラーなどで想定外のピンチに立たされたとき、そこから粘ることが
できていないと言えるのかもしれません。

そう考えると、昔のいわゆる「抑えピッチャー」はすごいと同時に、
可哀そうだったような気もします。

現代の「クローザー」とはちがって、7回や8回のノーアウト1・3塁とか
1アウト2・3塁などの大ピンチで登板し、そこから9回まで投げ切ることを
期待されるのが普通でした。

想定外のピンチどころか、最初から自分以外の投手がつくった
ピンチで登板することが「想定内」だったわけです。

もちろん、そこで打たれて得点されても、自分の失点や自責点には
ならないケースも多かったと思いますが、逆にきちんと0点で抑えた
場合には、通常より評価の高い特別な防御率を適用してあげても
よかったのではないかとさえ思います。