解✦談

解りやすく、解きほぐします。

積立投資による時間分散

「高値づかみ」を避けやすくなる

 

「長期投資」「分散投資」に加えてもうひとつ、私たちが投資をやるうえで、
ぜひとも取り入れたい基本的な考え方が「時間分散」です。

時間分散の具体例として、いちばん分かりやすいのが「積立投資」でしょう。

たとえば投資信託を購入する際に、あらかじめ一定の投資金額を決めておいて、
その金額ずつ同じ投信を毎月、定期的に購入し続けていく方法です。

積立投資をおこなうことのメリットは、大きく分けて3つあります。

ひとつ目は、積立投資の手法を用いると、投資信託を毎月数千円という小さな
金額から購入できることです。

これなら、たとえ手元にまとまった資金がなくても、少額ずつ無理のない範囲で
手軽に投資が可能になります。

2つ目は、購入時期を複数に分けることで、価格が高いときに多く買いすぎる
リスク(高値づかみ)を避けやすくなることです。

積立投資では、投信の基準価額が「高い月」には少ない量を、「安い月」には
多くの量をそれぞれ購入することになるため、結果として平均購入単価を
引き下げる効果が期待できます。

3つ目は、価格が上下するのを気にしないで済むため、精神衛生上、好ましい
効果がもたらされることです。

上記のとおり、積立投資では基準価額が下がった月には多くの量を購入します。
私たちは基準価額が下がった月を、「普段よりも多く投信が買えるチャンス」と
考えることができるので、基準価額の変動に惑わされず、淡々と長期投資を
続けることが可能になります。

2つ目のメリットについては、すぐにはイメージしづらいと思うので、
具体的な数字を使って見てみましょう。

ここでは、ある投信を毎月5万円ずつ1年間、積み立てたと仮定します。
話を分かりやすくするために、投信の値動きはわざと極端な例にしてあります。


  購入月   購入金額  基準価額  購入口数

1カ月目    50000円   20000円     2.5口 (50000円÷20000円=  2.5口)  
2カ月目    50000円   18000円   2.77口 (50000円÷18000円=2.77口)
3カ月目    50000円   17000円   2.94口 (50000円÷17000円=2.94口)
4カ月目    50000円   17000円   2.94口 (50000円÷17000円=2.94口)
5カ月目    50000円   15000円   3.33口 (50000円÷15000円=3.33口)
6カ月目    50000円   12000円   4.16口 (50000円÷12000円=4.16口)
7カ月目    50000円   14000円   3.57口 (50000円÷14000円=3.57口)
8カ月目    50000円   12000円   4.16口 (50000円÷12000円=4.16口)
9カ月目    50000円     8000円   6.25口 (50000円÷  8000円=6.25口)
10カ月目    50000円   10000円      5口 (50000円÷10000円=   5口)
11カ月目    50000円   14000円   3.57口 (50000円÷14000円=3.57口)
12カ月目    50000円   15000円   3.33口 (50000円÷15000円=3.33口)
13カ月目     -    16000円      -
      合計60万円        合計44.52口


この例では、1年間で60万円を投資して合計44.52口を購入し、1口あたりの
平均購入単価(基準価額)は13477円となります。
(60万円÷44.52口=13477円)

13カ月目の基準価額でこの投信を売却したとすると、得られる金額は71万2320円で、
投資の結果は単純計算でプラス18.7%となります。
(44.52口×16000円=71万2320円)
(71万2320円÷60万円=1.187)

注目したいのは、投信の基準価額が、積み立て開始時の2万円から売却時には
16000円まで下がっているのに、結果として18.7%の利益が得られたことです。

これは6カ月目から10カ月目あたりにかけて基準価額が下がった際に、
多めの口数を購入できたことが貢献しています。

積立投資では投資対象の価格が下がったときにも定額で購入し続けるため、
投資期間の全体を通して平均購入単価が下がっていきます。

投信を積み立てる場合は、最終的に基準価額が平均購入単価を上回りさえすれば
利益が出るため、売却時の基準価額が積み立て開始時の基準価額を下回っていても、
投資の結果としてみれば意外と大きなリターンが得られることもあるわけです。

 

より望ましい価格の発見効果も

 

ところで、上記の例で積み立てではなく、60万円をどこかの月でいちどに
投資した場合、どうなるでしょうか。

売却時の基準価額が16000円なので、1カ月目~4カ月目(赤色部分)の
どこで一括購入していても、いわゆる「高値づかみ」になってしまって、
利益は得られなかったことになります。

積み立てによる平均購入単価の引き下げ効果を、少し違った角度からみると、
なかなか面白いことに気づきます。


総額60万円の積立投資において、平均購入単価が13477円だったということは、
結果として「基準価額が13477円のときに60万円をいちどに投資した」のと
同じことを意味します。

さて、私たちは投信の基準価額が2万円から8000円まで徐々に下がり、そこから
また16000円まで徐々に上がるような状況のなかで、基準価額が13477円の時点で
「いまこそ買い時だ」と自信をもって判断して、60万円をいちどに投資することが
できるものでしょうか?

もちろん、いちばんの買い時は基準価額が8000円の時点だったわけだから、
それに比べると、13477円が高い買い値であることは確かです。

しかし、上記の例では12カ月の間に「基準価額が14000円以上の月」が全部で
8カ月もあったのに、実際にはそれを下回る基準価額でまとめ買いしたのと
同じ結果になっています。


つまり、積立投資では高値づかみを避けながら、結果的に「より望ましい価格」を
発見して、いちどに投資したのと同じ効果が得られることになるのです。

積立投資による時間分散が効果を発揮するのは、「投資期間中に投資対象の
価格がいったん大きく下がって、その後に上がる」ようなケースです。
バブル崩壊後の日本株などは、その典型といえます。

一方で、価格が当初に上がってその後下がったり、一本調子で上がるような場合には、
時間分散の効果が十分に発揮されなかったり、まったく得られないこともあります。

このように、投資対象の値動きに条件がつくことから、積立投資に過剰な期待を
抱かない方がよいという意見もありますが、私たちが数十年の長期で積み立てを
考えるならば、とくに気にする必要はないでしょう。

これから数十年にわたって投資対象の価格がどのように動くかなど、
誰にも分からないし、そんな結果論にすぎない話をいちいち気にしても
仕方がないからです。