解✦談

解りやすく、解きほぐします。

長期投資の効果

短期の「当たり外れ」は意外と大きい

 

日経平均株価を10年間で区切って見てみると、面白いことが分かります。

まず、2010年末~20年末の10年間について。

日経平均株価は2010年末が10228円92銭で、20年末には27444円17銭でした。

私たちがこの10年間ずっと日経平均株価に投資していたと仮定すると、
投資成績は単純計算でプラス168%となります。

その期間中、どこかの1年間だけに私たちが投資したと仮定した場合、
投資成績がマイナスになったのは以下の2ケースだけです。

●2010年末~11年末(マイナス17%)
●17年末~18年末(マイナス12%)

なお、投資成績が最も高かったのは12年末~13年末のプラス56%なので、
1年間だけの投資成績について最高値と最低値を比較すると、73%分の
差が出ることになります。

2012年末から始まった、いわゆるアベノミクス相場のおかげで、この10年間の
日経平均株価はおおむね上昇傾向が続いたのですが、それでも1年単位でみれば
「当たり外れ」はあったわけです。

それでは次に時期を5年間ずらして、2005年末~15年末の10年間を見てみます。

2005年末が16111円43銭で、15年末には19033円71銭だったので、
10年間ずっと投資し続けた場合の投資成績はプラス18%です。

どこかの1年間だけ投資した場合の投資成績は、以下のとおりです。

●2005年末~06年末 プラス6%
●06年末~07年末  マイナス11%
●07年末~08年末  マイナス42%
●08年末~09年末  プラス19%
●09年末~10年末  マイナス3%
●10年末~11年末  マイナス17%
●11年末~12年末  プラス22%
●12年末~13年末  プラス56%
●13年末~14年末  プラス7%
●14年末~15年末  プラス9%

1年間だけの投資成績について、最高値だった「プラス56%」と最低値だった
「マイナス42%」を比較すると、98%分の差が出ることになります。
やはり1年単位の「当たり外れ」は意外と大きいことが分かります。

こうした「当たり外れ」は、日経平均株価の「ぶれ」や「変動」と言ってもいいし、
リターンが大小にぶれるという意味で「リスク」と呼んでもいいでしょう。

株式や投資信託など値動きのある金融商品は、1年程度の短期でみるとリターンが
大小にぶれやすい性質をもっています。

野菜の栽培にたとえると、豊作の年もあれば、凶作の年もあるということです。

ところが10年間、20年間と投資期間が長くなるにつれて、リターンのぶれ幅は
小さくなっていくことが統計的に立証されています。

それが長期投資の効果といわれるものです。

ただし、ぶれ幅が小さくなることは確かでも、長期投資をやれば必ず投資成績が
プラスになるわけではありません。

たとえば上記の時期をさらに5年間ずらして、2000年末~10年末の10年間を
見てみると、10年間ずっと投資し続けたとしても投資成績はマイナス25%です。


日本の株式などに単独で投資する場合には、景気の強弱や為替の動きなど、
日本の株式に影響を与えるさまざまな要因によって、10年程度の長期投資でも
十分に効果が得られないことがあります。

長期投資が本当に効いてくるのは、実はそこに「分散投資」や「時間分散」といった、
さらなる投資の工夫が加わったときなのです。

 

値動きの性質が異なるものの組み合わせ

 

古い話になりますが、一例として1929年に始まった世界大恐慌と、それ以降の
米国株式について簡単に紹介します。

米国の代表的な株価指数である「S&P500」は、世界大恐慌の影響を受けて、
1929年8月の高値から最大で9割近い下落を記録し、元値を回復するのに
25年という年月がかかりました。

このデータは「配当なし」の指数でみた場合ですが、「配当込み」の指数でみても
元値の回復には15年5カ月がかかっています()。

※「配当込み」だと元値の回復が早くなるのは、株価指数を構成する銘柄から得られる配当が積み重なり、
投資元本が大きくなることで、いざ株価が上昇を始めたときに
獲得リターンが増大して、投資成績の
回復スピードが加速されるからです。


投資対象を株式と債券に分散して、なおかつ積み立てによる時間分散もおこなうと、
投資成績の回復は目に見えて早まります。

1929年8月から米国株式(配当込み)と米国債券に50%ずつ、毎月一定額を
積み立てたと仮定すると、3年9カ月後の33年5月には投資成績がプラスに
転じていました。

大恐慌当時と比べると、今日では債券をとりまく環境が大きく異なるため、
今後も同じような分散投資の効果が得られるかどうかは不明です。

ただ、いずれにしても、株式とは値動きの性質が異なる他の金融商品にも同時に
投資することで、株式だけに単独投資をする場合よりも、投資している資産全体の
リターンのぶれを小さく抑える効果が期待できます。